ASHFORD Story_2 /アシュフォード 1986年〜1990年代前半の画期的モデル

ASHFORD  Story

第二回 アシュフォード 1986年〜1990年代前半の画期的モデル

 

システム手帳は、誰でも簡単に使えるシンプルな道具です。

上質なレザーをまとったバインダーは道具としての魅力に富み、所有欲を盛り上げます。自分のスタイルや目的に合ったリフィルを選び、活用することで、仕事も日常生活もどんどん快適になっていきます。

この連載「ASHFORD Story」では、アシュフォードのシステム手帳とその背景にある物語を熱く語りながら、無限に広がっているシステム手帳の楽しさをお伝えしていきます。

今回は、アシュフォードが創業した1986年から、1990年代前半に登場したエポックメーキングなモデルを辿りながら、最新のモデルに潜んでいるアシュフォード哲学を探っていくことにします。

 

 

1980年代前半に、元祖システム手帳である英国ブランド、ファイロファックスが本格的に日本の文具市場に上陸します。

今、1980年代の日本を振り返ると、バブル経済と呼ばれる80年代後半の絶頂期に向かって、急激な登り坂を一気に駆け出している状態。栄養ドリンクのテレビCMでは、ビジネスマンに向けて「24時間 戦えますか。」の熾烈なメッセージが連呼されていました。

自動車生産台数はアメリカを抜いて日本が世界1位となり、世界でも有数の高い額面である500円硬貨が登場。経済が活況するこの時代を背景に、システム手帳は、仕事をするための必携の斬新なツールとして、多くのビジネスマンに受け入れられました。

1980年代の後半は、システム手帳の黎明期であり黄金期。

こんな時代の中で、1980年代半ばに創業したアシュフォードが送り込んだのが第1号モデル「プレスコット」(上写真)です。発売は1986年のことでした。

プレスコットは、素材、デザイン、縫製などすべてにおいて最高クラスを目指して作られました。ビジネスの最前線で、ステータスシンボルを主張するツールとしても機能するように、細部にわたってアシュフォードの哲学を宿しているモデルです。

リング径は最大級の25ミリ。角背の「スクエアバック」仕様で、開きはとてもスムーズ。180度にぱたんと開き、フラットな紙面で記入がしやすい。表側のカバーには収納のためのジッパー付きポーチ、裏側のカバーにはカード類を収納するカード段を配置しています。

80年代に外出先からかける電話は、公衆電話が主流。新幹線などで出張する時は電車の時刻表が必携でした。テレホンカードやアドレス帳、取引先のデータ、鉄道の路線図、地下鉄の乗り換え……など、今ではスマートフォンに集約されている機能のほとんどをシステム手帳が担っていたのです。紙のリフィルを綴じるだけでなく、総合的なビジネルツールを集約する道具として、プレスコットは大成功を収めました。

 



2016年、アシュフォードの原点であるプレスコット30周年を記念して、新生プレスコットが誕生します。時代に合わせた仕様変更をしているものの、基本的な構造やスタイリッシュな佇まいは当時のままです(写真上)。

 

 

 

さらに、プレスコットをベースにして機能に磨きをかけた「ヘリテイジ」(写真上)が、アシュフォードの伝統を今に受け継いでいます。

プレスコットは牛革にゴート(山羊)調の型押しをしていましたが、ヘリテイジはリアルなゴート革を採用しています。ヘリテイジの革は、通常のゴートよりも繊維が緻密で、とても丈夫なビッグゴートです。タンニンで鞣し、オイルをたっぷり入れて加工しているので、手触りの良さも抜群。強度があり、軽快に使え、手触りが良い。

プレスコットが秘めていたアシュフォードの哲学を、より洗練した形で現代に蘇らせたのがヘリテイジなのです。

→ヘリテイジシリーズ

 

 

元祖プレスコットが誕生した1986年の翌年に、アシュフォードは早くもA5サイズの新モデルを登場させます。A5はリフィルの紙面の大きさがバイブルサイズに比べて約2倍あるので、たっぷりと書き込むことができます。リフィルはA5正寸なので、A4の資料などにパンチすれば、2つ折りをしてそのままファイリングできるなど、実用的な機能を持っています。A5の初代モデル「アダムス」は、水牛の革を採用し、軽さと独特の風合いをデザインに生かしています(写真上)。

→現在のA5サイズラインナップ

 

 

1980年代後半のシステム手帳の黄金期は、ユーザーの層をどんどん拡大していきました。女性が使う小型のバッグなどでも出し入れしやすい小さなシステム手帳を時代が求め始めたのです。

1991年、ミニ6の初代モデル「オールドタン」が登場します(写真上)。このモデルもアダムスと同じ水牛の革を使い、手触りの良さと機能を追求していました。水牛の革が持つ特徴を生かしたデザインは、現在のアシュフォードのエントリーシリーズ「ディープ」にも引き継がれています。

→ディープシリーズ

ミニ6は、バイブルサイズのリング穴と同じ数の6穴です。リングの間隔も同じ19ミリピッチですが、すべての穴の間隔を同じにすることでリフィルの高さが126ミリと短くなっています。携帯しやすく、かつ適度な筆記面積を持つミニ6は、バイブルサイズに継ぐ主力のサイズとして90年代にラインアップを拡大していくことになります。

→ミニ6サイズ

次回は、1995〜2000年代に登場した「マイクロ5」、そしてアシュフォード独自企画「HB×WA5」の源流を辿っていきます。

→楽しみな次回はこちら